視覚障害者情報提供施設がお送りする読書会『よむ・きく・はなす Vol.5』開催レポート 『よむ・きく・はなす』は、本を通して視覚障害者と晴眼者が出会う機会を創ることを目的にはじめた読書会です。 「本が真ん中、本好き同士が話すだけ」をモットーに、「障害」を真ん中にせず、出会って話す。でも気になったなら視覚障害のことを尋ねてみたって一向にかまわない。ここで出会って話して、お互いが幾分か身近になって貰えたら嬉しいですし、そんな場所になっていったらいいなと思って、続けています。 さて。 視覚障害者情報提供施設がお送りする読書会『よむ・きく・はなす vol.5』は2022年9月11日(日)10:00〜12:00、名古屋ライトハウス情報文化センター2階会議室にて開催いたしました。 課題作は『ボッティチェリ 疫病の時代の寓話』バリー・ユアグロー著/柴田元幸訳 ignition gallery 発行。 参加条件は、課題作を読み終えていること。 今回はキャンセルもあり、ご参加いただいたのは、視覚障害者3名、晴眼者7名のみなさま。そこにスタッフ1名ずつが加わり、2つのテーブルに分かれて、いつもより幾分人数少なめでスタートです。 冒頭からなんですが、どうやら今回の課題作はとても手強かったようです。バリー・ユアグローの作品を初めて読んだ方が10名中9名。多くのみなさんにとって初めて経験するバリー・ユアグローの世界、文体、エトセトラ・・・。さぞ強烈だったのではないでしょうか。ましてや、コロナ禍において「正気を保つために書いた」とバリー・ユアグロー自らが公言していることもあり、12の掌編の世界のみに浸ることは難しく、関連づけをしてしまう自分たち。ワタシタチは本当に正気を保って読んでいたのでしょうか。  今回は、ご参加いただいた方それぞれにお気に入りの作品を紹介いただきながら対話していく形を取りました。これから読まれる方もいらっしゃると思いますので、いくつかの掌編の、いくつかの感想だけをご紹介致します。 『鯨』  ・外国人労働者。エッセンシャルワーカー。 ・知恵も言葉もないが、責任があって有能な鯨と、知恵も言葉もあるが、無力で無能で無責任な人間。 ・差別的な視線。だから鯨の背中に乗ったりする。 『風に吹かれて』 ・エッセンシャルワーカーと在宅ワーク(雲=クラウド?)       ・閉じ込められてつらい時に、ここじゃないどこかにあるかもしれない世界に思いを馳せる。著者の逃避や希望、切なさなどが感じられる。 ・上の人と下の人は、お互いに気持ちがわからない。 ・土地が変われば、文化も変わる。移民は疎外感を感じているのでは? 『スプーン』 ・「匙を投げる」などの意味にもつながる? ・誰にとっても価値があるわけではない。文化の違い。 ・エイリアン=外国人を表しているのでは。 ・主人公は感染する危険性のある地に赴く。魅せられてしまっている。僕たちはもう戻れない、ということ。 ・外国人労働者を表しているのではないかと思われる表現はこの作品にもあるね。 『影』 ・普通ではないことが起こってしまっているが、それが一定数存在する。 ・影、分身。アイデンティティー。居場所がなく身の置き方がわからない。自分が何者なのかわからない状態でもあるのか。 ・女の子は主人公と異なり未来が長い。影をなくしやすいのだろうか。  ・影がないことは、死ではなく分身の意味で裏表がないことではないか? 『ボッティチェリ』 ・悲惨で惨めなときほど笑いが必要。毒のある笑いが。著者の真骨頂のような作品。ただ、ロックダウンの渦中にここまで昇華させるには、やはり深く深く潜っていくことが必要だった思うので、渦中におけるバリーは本当に危ない状況だったのではないだろうか。 ・作者の美に対する僻みではないか? 開始冒頭では、読めば暗くなっていく、苦しくなるような話ばかり、うつになってしまうとなどの意見も出ていましたが、対話を通し、まったく違う捉え方を聞くことにより、視点が変わり、改めて内容を振り返ってみると、そんなに辛く悲しい話というばかりでもないといったところに辿り着いた方も。もちろん、そうでない方も。 また、バリー・ユアグローが1か月強の期間書き続け、送り続けることで精神を回復していく様が凄かった。もう途中からは物語を紡ぐことに夢中になっているように感じた。作家が作家であること、物語を書き続けることの狂気のようなものを垣間見ることの出来る作品、といった意見も。 そして、今回はご参加のみなさまに、とても大きなサプライズをご用意することが出来ました。本作品の翻訳者である柴田元幸さんから、バリー・ユアグロー理解の一助になればと、未発表の掌編の試訳をご提供いただいたのでした!!! もちろん、共有の範囲は、その場にご参加のみなさんということとなりますので、ここでタイトルや中身などはお伝え出来ませんが、大いに盛り上がったことはお伝えしておきます。柴田元幸さん、誠にありがとうございました。ご参加のみなさんもとても喜んでおられました。 ignition gallery 熊谷様にも、読書会案内を開始した当初よりお気に掛けていただき、大変お世話になりました。誠にありがとうございました。 ご参加いただいたみなさま、開催への案内等ご協力いただいたすべてのみなさま、今回も誠にありがとうございました。   次回は2023年3月、名古屋ライトハウス情報文化センター集会室にて開催いたします。日程、課題作が決まりましたら、情報文化センターホームページやSNSなどで発表致します。 ではみなさま、またお会い致しましょう! SPECIAL THANKS to (順不同) ignition gallery() on reading (東山公園)港まちづくり協議会 (築地口)筆談カフェ桐林館喫茶室(いなべ)TOUTEN BOOKSTORE(金山)喫茶アミーゴ(大須) 読書喫茶リチル (今池)KDハポン (鶴舞)アートラボあいち (大津) モノコト (大須)ギャラリーカフェ テオ(車道)シマウマ書房 (今池)  ちくさ正文館(千種) 名古屋市立図書館全館 名古屋市美術館 名古屋市社会福祉協議会 ガイドネットなごや 名古屋市総合リハビリテーションセンター 名古屋盲学校 岡崎盲学校 愛知県図書館 愛知大学 犬山市立図書館 小牧市中央図書館 名古屋市