アイのかけはし

アイのかけはし vol.23ainokakehashi

『地域とのかけはし ~学校でこんなことをしてきました~』第2弾


「アイのかけはしvol.23」は、当事者の方が小学校などで行っている講習会での取り組みをインタビュー形式でお届けする「地域とのかけはし~学校でこんなことをしてきました~」の第2回目です。

【名古屋盲人情報文化センター】新井美千代さん 1954年生まれ 女性

新井さん:視覚障害、網膜色素変性症で全盲やね。ロービジョン歴3年、全盲歴20年目。LV歴の前も視野が狭かったけど、視力がいいときは見えにくいとは思わないんだよ。
 顔の幅から手を斜めに広げたぐらい見えるわけね。自分は、そのころ両頬っぺたの間ぐらいの視野しかなかったけど、視力がいいと遠くは端から端まで鈴鹿山脈みんな見えるわけですよ。物を蹴っ飛ばすぐらいで、見えなくなったとはそう感じなかったね。字が読めなくなってくると、自分が見えなくなったなって思いだすね。


インタビューの様子の写真

インタビューの様子


講習の様子の写真

講習の様子


Q.どこでどういった方に対してお話、講演、講習会をされましたか?されていますか?


新井さん:個人で受けているところでは、南区の呼続小学校は今年で19年目、中区の栄小学校は17年目。ずっと、呼続は6年生、栄は4年生。
 他には、職場からで港区の小学校に行ったりとか。中学校は私は少ないかなあ。

Q.どんな話をしてきたんですか?

新井さん:呼続小学校は2月と時期が決まっていて、前半の1時間は道徳、後半の1時間は福祉の総合学習で生活の話。
 前半は、私は中途障害だから、健常から見えなくなってきたときには絶望感を感じたし、そうだろうと思っていたけれど、実際は目の不自由な人は健常者とは違う方法でいろんな暮らしをしているんだよ。もうあかんと困難にぶち当たったときに方法を変えたら解決法が絶対あるんだよ。あきらめなくてよかったってね。そういう話を半分するかな。
 後半は、目の不自由な人たちの生活ってこんな風なんだよって普段の生活の様子を紹介する。最後は、結局は道具とかを使って工夫はするけども一番頼りになるのは周りの人たちのサポートなんだよ。みんなに助けられているんだよ。だから、みんなもよろしくみたいな(笑)。
 私が見えていたころは、道路とか道は目で見るもんだと思ってたわけですよ。踏切に向かって歩いてて、踏切の手前で駅に入っていかなければいけない。見つけられなかったら踏切に入り込んじゃうわけですよ。ドキドキしながら東に向かって歩いていて、右、南に曲がらないといけなかったんだよね。ふと途中に小さな路地があったときに、日影が切れてお日様がかーっと当たったわけだ。その時に、お日様だって教えてくれるって思ったわけですよね。また、家並みになったから日がかげる、日が当たったら路地だなって。今度お日様が当たった時が駅へ入っていく道だなって思ったら、白杖で壁を探るだけじゃなくて、お日様が当たるかどうかという新たな手掛かりが見つかったんだよ。風だって教えてくれるでしょ。今までは、なんでも目だけだったのに、お日様も風も教えてくれる、他にも方法があったんだと気づいたね。
 栄小学校は面白くて、2時間行くんです。はじめの1時間は、目の代わりに触ったり音とかで知るんだよって生活の話をします。2時間目は、1クラスしかないので5・6グループに分かれてリレー形式で学校案内をしてくれる。
寺西:面白いですね。
新井さん:悪いけど、私十何年同じ学校歩いてるからよく知ってるけど…。でも子供たちは初めてで新鮮なんだよね。4・5人ぐらいで、ガイドしてくれる人、説明してくれる人など分担して「階段だからちゃんと言わないかん」空いてる教室に入れてもらって、「これがピアノです」って教えてくれたりとかね。壁に貼ってあるポスターのこととか、教室の中の様子とかも教えてくれるね。面白いよ。こんなのが十何年間続いているね。これが、一番初めに担任の先生と一緒に考えた2時間のカリキュラム。それが永遠と受け継いでおられますねえ。
 別の学校だけども、ずいぶん前に金山で「新井さんこんにちは」って子供が声をかけてくれたことがあったよ。
寺西:うれしいですねえ。こっちはなかなかわからないですが。
新井さん:なかなかどころか全然わからんけどねえ。


Q.話をする時に、何か気を付けたことや特に伝えたかったことはありますか?


新井さん:う~ん、生活の説明の時は物を持っていって見せてあげたり、点字を1ページ読んで聞いてもらったり、子供たちに点字でメッセージを渡したり、たくさん物を持っていて、自由時間に触ってもらいます。「こわれん、こわれん」ってね。
寺西:折り畳みの杖を伸ばして、伸びるんだよってやるだけでも結構みんな驚いて食いついてくれますよね。
新井さん:授業では何でも質問していいよ。大人から聞かれたらむかつくことも、子供のうちならいいよ、今のうちに好奇心を満たしておいてください、子供に聞かれたら怒らんよって、担任の先生にあらかじめ伝えておくかな。
寺西:前、小学校に行ったときに「自分の家の中の様子はわかりますか」って聞かれたことがありますね。
新井さん:そりゃ聞きますわなあ。子供、目つぶったらわからんもん。脱線するけど、そうでもないんだよ。10年もずっと暮らしてた自分の家で、目をつぶって5日間トイレを使ってくださいって宿題を出したら、初めの日はトイレのノブが見つからなかったって言った子がいたよ。そこ何年暮らしてんのって思わず聞いちゃった。ノブが右か左か知らんかったって。目で見てつかむから、記憶になかったんだね。
寺西:目で見てしまったらノブの位置なんか意識しないですよね。
新井さん:他所に行ってわからなかったって声は何人もあったけど、自分のうちのノブが見つからなかったって言うのは印象的ですよ。

Q.お話をしてみて、子どもたちから印象に残った質問とかってありますか?

新井さん:私は女性だから、子供に限らないけども、一番多いのはお料理作りますかって質問だよね。
寺西:ありますよね、包丁は使えるのとか、火を使ったら危なくないんですかとかね。
新井さん:乱切りとか大きく切るのが優しそうに見えるけど、カステラはきれいによう切らんよとか。平行に細長く切るのは難しいよって。きゅうりのスライスとか千切りとかみじん切りは上手だよって言ったら、「え~」って声があがるね。
寺西:実家にいるときに、食パンを半分に切ってから焼いてたけど、絶対偏って左側が小さくなってたんですよね。癖だとは思うんですけどなかなかマスターできなかったですね。
新井さん:包丁の向きもそうだし、おろしていくときに斜めに入っていくこともあるね。
 他には、ちょっと答えに詰まる質問としては、「目が見えなくなってよかったと思うことはありますか」って聞かれるんだよね。そりゃねえ…、子供だからねえ…、答えるけどね。見えなくなってよかったかっていうと、そうでもないと思うけどね。
寺西:正直なところそうですよね。
新井さん:正直なところ見えないで生まれてくるよりは見えた方がよかったよね。
寺西:最近、見てみたいなあという思いがどんどん強くなってきてるんですよね。特にセンターで仕事をする、情報を伝える側になってからのようにも思いますが。
新井さん:あぁやっぱし。らしんばんの調査に行くと、見たいこといっぱいじゃない?先天の子も言ってたよ。情報を知らせられずに暮らしてた時は、これで当たり前だと思ってた。でも、大きくなってきて人から聞くと、僕の知らんことはこんなにいっぱいあるのかって驚いたって言ってたよ。
寺西:たくさんのことを知ると、いかに情報が不足していたかを実感させられてしまうからかもしれませんね。学校とかで話す機会も増えると、障害についても意識せざるを得ないですよね。
新井さん:(話を戻して)見えなくなってよかったですかって言われるけど、そりゃあんまよくなかったけどって正直に言うよ。
寺西:新しい出会いはありましたっていうぐらいですよね。
新井さん:そうだね。あと、その質問が出たときに、先生はドキッとしてるんじゃないかってね。でも大丈夫、大人に聞かれたらいやだなって思うこと、しつこくどんな風に見えるんですかって聞かれたらいやだなって、子供さんだったら大丈夫ですよってね。
 普段はおとなしい子が近づいてくるっていうのがあって、担任の先生とかがびっくりしたっていう、福祉のことだけではなくて、子供たちにそういう場も与えているってこともあるんだろうね。
寺西:暗闇体験でガイドをしているとそういうことがありますね。
新井さん:そうだね。意外な面を見つけるよね。
 大変な思いで暮らしていることを聞いて、小学生に「前向きだと思いました」と言われたときは、苦笑いでしたね。
 それと、工夫すればできるよってことと、できなくてもどかしいこともあるよと、両方バランスよく話ができるようには心がけてるかな。「見えなくても平気、平気」って言っても伝わらないし、見えないから本当に大変なんだよっていっちゃうと暗くなるし、ある部分では幸せだと思って暮らしてるってにこやかに言いながらも、手伝ってもらわないといかんよ、悔しい思いもあるよってことはしっかり伝えるようにしてるかな。話す時にはそのバランスは一番気を遣うね。

Q.そもそも、この活動を始めたきっかけってあるんですか?

新井さん:呼続小学校は、自分が教師を退職したところ。退職したその年に、総合学習が始まる直前で、先生の事業研究で喋ったのがきっかけかな。
 栄小学校は、呼続小学校にいた先生が転勤していったところ。その先生と一緒に授業を考えて、それから続いてるね。
寺西:退職してすぐってすごいですね。
新井さん:2年前ぐらいに同僚に話をしたんじゃないかな。それを聞いた先生が、間違った理解、誤解を変えたかったんじゃないかな。
 はじめの頃に、用具プラザに見学に行ったときに、車いすの人たちがカーテンを閉めるマジックハンドのような道具があって、「これ寝たままカーテン閉めれるし欲しいわあ」っていった。そしたら、それを聞いた先生が、「こらっ!これは不自由な人が使うものだから、あんたは自分で歩いて閉めに行きなさい」って怒ったったって話があった。でも、私はその時に「まあ、そういわずに、今ならその人たちだけが使ってるから特殊なもので高いんだけど、体が不自由じゃなくてもその道具を便利にみんなが使ってくれたら、安くなるし。特別なものって思わないでよ。その垣根を取ってほしいわ」ってゆったん。ユニバーサルデザインの考え方だよね、その頃かこの後にこの言葉を聞いたかな。
 その頃に、鶴舞の歩道橋のところにエレベーターがついていて、「新井さんエレベーターがあるよ。私たちはこれ乗っちゃいけないわよね」って言ったんだよね。「いやいや、どうせ電気代は一緒だから一緒に乗った方がいいんじゃないですか」って言っちゃったよ。健康のためという問題じゃなくて、障害者が使うものを健常者が使ったら罰が当たるみたいな雰囲気が20年ぐらい前にはあったよね。人を押しのけてまでは乗らんでほしいけどね。

Q.やってみて実際どうですか?

新井さん:子供たちはよく聞いてくれる、食いついてきてくれるから楽しいね。
寺西:小学生対象が楽しいですね。高校生向けはあまり経験がないですね。
新井さん:高校は方法論とかよりは自分の生きざまを話すのが一番食いついてくるね。視覚障害者の暮らしというより、「私の暮らし」という視点でね。栄小学校は、1時間交代で案内してくれるから楽しいよ。
寺西:1回案内してもらいたいです。
新井さん:ほんとー、栄小学校もそのうちバトンタッチするわ。

Q.今後も、この活動を続けていきたいと思いますか?

新井さん:そろそろ若い人たちに交代かな。でも、子供たちの教室に行くと、違う空気があって、勇気がもらえるとかエネルギーをもらえるというのは嫌いだけど、よく話を聞いてくれるからうれしいね。
 学校というところは不思議なとこで、年を取らないわけですよ。先生は年を取っているけど。受け入れてもらえれば、子供たちとの触れ合いは続けていきたいですね。

Q.講演を聞いた方のコメントや、感想で面白かったことなどがあれば教えてください!!

新井さん:必ずしも感想は来ないよ。大学とか専門学校はくれるけど、小学校はあまりないかな。やりっぱなしだからあまり印象がないねえ。
 出来ないと思ってたのに、こんなことができるって驚きました。ちょっと知らない世界に気づいてくれたコメントとかはうれしいよね。

以上、中身の濃い1時間でした。

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