アイのかけはし

アイのかけはし vol.107ai

6月1日に名古屋ライトハウス用具展を開催しました


 今年は、アクセスの良い名古屋駅近くの「ウィンクあいち」12階を会場に開催しました。今回は「知ろう!暮らしのアイテム 見えない・見えにくい方への情報と機器の展示・相談会」というテーマで、見えない・見えにくい方はもちろん、日ごろからサポートしているご家族や支援者、医療機関や福祉関連事業者の皆さまにも、最新の機器と福祉に関する情報をお届けしました。
 また、「祝200歳 点字の生誕祭」も同時開催し、点字に携わる多くの方へ向けて発信を行いました。
 参加企業・団体は37、来場者数は800名以上と大変盛況でした。


企業ブース


 各社が最新機器を出展し、来場者の皆さんが熱心に体験されていました。企業の担当者と直接対話し、意見や感想を伝える貴重な機会にもなりました。


ブースに詰めかける多くの来場者

ブースに詰めかける多くの来場者


 三菱電機株式会社のブースでは、公道を走る自動配送ロボットや音声で操作ガイドをしてくれる電子レンジや炊飯器を触ることができました。
 アルプス・アルパイン株式会社のロービジョンハットは、今回初出展。ロービジョンハットは、頭に被ることで、方位(北)や頭の高さの障害物を振動で知らせてくれるデバイスです。白杖では足元の障害物しか確認ができませんが、これを被ることで、顔のあたりに飛び出ているトラックの荷台や看板、木の枝などを避けることができます。これは、まだ試作品とのことです。
 錦城護謨株式会社では、視覚障害者歩行誘導マット「歩導くんガイドウェイ」を出展。実際にマットが敷かれ、上を歩いて足触りを体験されていました。


来場者が歩導くんガイドウェイの上を歩いている様子

来場者が歩導くんガイドウェイの上を歩いている


 そのほか、ICTや生活・学習に関する相談に対応する団体・情報ブースも多数出展いただきました。


点字の生誕祭


 2025年は、ルイ・ブライユが6点式点字を考案してからちょうど200年の節目の年にあたります。記念行事として、点字の歴史と未来をテーマにしたトークイベントのほか、「だいてん丸」での「め」書き競争、点字へのお祝いメッセージの紹介、オリジナル記念グッズの販売、点字筆記具の展示などを行いました。


 トークイベントでは、「点字のこれまでの歩みを振り返る」と題して、原田良實氏(名古屋ライトハウス愛盲報恩会代表)、長崎三希子氏・長崎龍樹氏(点字投票運動の父・長崎照義の子・孫)に講演いただきました。また、後半では、「点字のこれからを展望する」と題して、渡辺昭一氏(日本点字委員会会長)・石川准氏(有限会社エクストラ代表取締役)に講演いただきました。どちらも立ち見が出るほどの盛況となりました。


講演会の様子

講演会の様子


机上に陳列されたタイプライター類 左からアポロスーパー、ライトブレーラー、テラタイプ、ドットメーカー、ナカムライター

机上に陳列されたタイプライター類 左からアポロスーパー、ライトブレーラー、テラタイプ、ドットメーカー、ナカムライター


[Topic]点字投票の運動は名古屋から始まった


 点字投票の実現に向けた運動が名古屋から始まったことをご存知でしょうか。龍樹氏、希子氏の講演から掘り下げて紹介します。
 世界で初めて日本で点字投票が認められたのは、今から100年前の1925年。その実現に奔走したのが、愛知県出身の故・長嵜照義(ながさき・てるよし)氏(1903〜1981)です。イベントでは、照義氏の孫で元盲学校教諭の長嵜龍樹(たつき)さんが、祖父の生い立ちや人柄を紹介されました。
 照義氏は農家に生まれ、6歳のとき、暴れ馬から逃げる際に稲穂で目を傷つけ、弱視となりました。小学校を中退後、印刷所で働きながら、15歳で三療(鍼灸・按摩・マッサージ)の道を志し、師匠のもとで住み込み修行を始めました。給料はすべて書籍の購入にあて、本に顔を近づけて夢中で読書をしたといいます。師匠の支援を受け、早稲田大学の通信教育で学びました。
 大正12年(1923年)12月、照義氏らを中心としたリーダーによって「点字投票規制連盟」が結成されました。翌年1月には全国から約2000人の盲人が名古屋に集まり、「全国盲人大会」が開催されました。この大会では「我らは盲人、点字投票有効の実現を期す」との宣言決議文を採択。国会への請願書も提出されました。さらに、名古屋に滞在していた憲政の神様と称された政治家尾崎行雄を旅館に訪ね、直接訴えたというエピソードも残されています。
 そして1925年12月1日、「東海普選民衆大会」において点字投票の付帯決議がなされ、世界初の点字投票実現へとつながりました。実際に衆議院選挙で点字投票が行われたのは、1928年のことです。
 龍樹さんは、「祖父は若いころは点字を使っていませんでしたが、仲間のことを考えて点字投票運動に取り組んだ。その姿勢に、強い利他の精神を感じます」と語られました。
 名古屋から始まった点字投票の歩みは、視覚障碍者にとって尊厳と権利を守るための大きな一歩でした。その志を、多くの方に知っていただきたいと思います。


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